| 「違う」点も楽しんで 9.お年寄りを大切にする心 |
| ライター 岡田 夏憂 |
| この時期になると地元の中学校から体験学習と称して、数日間、三人ばかりの学生がやって来ます。職業体験ということですから、もちろん高齢福祉に興味があり、介護の現場を覗いてみようという意欲を持ち参加している生徒がほとんどです。 けれど、初日はたいてい入所者と会話をすることもなく一日を終えてしまいます。彼女達の感想文を読むと「家にお年寄りはいないし、近所にもいない。おばあちゃんとどうやって話したら良いのかわからない」と書いてあります。 近ごろは、高齢者を対象とした施設や制度の充実ははかられていますが、実際のところ、お年寄りを大切にするという思いが薄れてきているように感じます。こういう問題は制度や経済状態というよりも、むしろ、人々の心の持ち方に関係するのですから、子供のころからの情操教育が大切なのではないでしょうか。 ですから、中学生になって体験というかたちでお年寄りに接するのではなく、もっと小さいころから自然にお年寄りと交わる機会があれば、高齢者を特別視することなどありえないのだと思います。 日本の高齢化は非常に早いスピードで進んでいます。八十歳では長生きというには若いかもしれません。施設に入所されている方はほとんど元気な八十歳、九十歳のお年寄りです。 先日、「演芸大会」という、施設に芸人さんを数人招いて演歌や浪曲、河内音頭などを披露してもらう催しを行いました。もちろん中学生にも参加してもらいました。開始から三十分が過ぎようとした時、彼女たちはすっかり夢心地、全員がいねむりを始めてしまったのです。 やれやれどうしたものかと職員である私たちも首を傾けましたが、そっとしておくことにしました。後で彼女たちにいねむりの理由を尋ねてみると、興味がなかったからという返事が返ってきました。 若者とお年寄りの間に文化的ギャップや体力的な差があり、生活する上で大変なことも多いのですが、これらを楽しいと思えるかどうかということが「介護福祉士」という仕事の醍醐味だと思うのです。彼女たちにこのことが伝わらなかったことは、とても残念なことです。 いねむりしている彼女たちのことなんて、全く気にとめる様子もなく、河内音頭のリズムに合わせて踊りだす人、舞台に上がってしまう人。足が丈夫でないからと「エンヤコラセー、ドッコイセー」と元気に声を掛ける人。施設のお年寄りは本当に元気です。「アンコール」と掛け声や拍手が鳴り止まないまま演芸大会はおひらきとなりました。 さて、今日は中学生の職業体験最終日です。彼女たちにこんな質問を投げかけてみようと思います。「お年寄りと一緒にいて、いい面って何?」これは、いつもこの仕事をしている自分に対して問いかけていることでもあります。 便利なだけで人間の生活が成り立つのではなく、異なる世代間の交流が新しい価値観に気付かせてくれることもあるのです。 「たまにはね、お年寄りの趣味に合わせてみるのも楽しいよ」と私からの小さなアドバイスを彼女たちはどう受け取ってくれたのでしょう。彼女たちの笑顔に期待しています。 |