毎日一緒に泣き笑い

1.介護福祉士という仕事
ライター 岡田 夏憂  
 私が働いている施設には、それほど、介護を有するお年寄りは入所されていません。だから、介護福祉士である私たちの仕事は、年間を通じて行事の企画立案やレクリエーション、リハビリ体操などが主な仕事になっています。また、入所者の日常生活の援助、学生の介護実習をお手伝いすることも大切な仕事です。
 介護福祉士という仕事を一くくりにしてしまうことは、とても難しいことです。私の仕事場である施設も介護支援センターやデイサービスセンターなどさまざまなセクションにわかれていて、それぞれ行う業務は違います。けれど、どんなことをしていても「目の前のお年寄りに対して、自分はどう接することが最良なのか」を考えていることに変わりはありません。
 このように、毎日お年寄りに囲まれて生活していると、時々びっくりするような事が起こります。その出来事に一喜一憂して泣いたり笑ったりすることが介護福祉士という仕事のだいご味だと思っています。
 もちろん、施設は病院ではありません。そして、私たちは、病気を治すドクターでも、看護をするナースでもありません。ただ、彼らとは違う、もっと人間臭い距離で入所のお年寄りと生活を共にすることが仕事なのです。
 介護の究極の意味は、何もせず、ただ傍に寄り添うことだと言われますが、このことが年数を重ねるごとにわかってきたような気がします。そんな私の目の前で繰り広げられる、おばあちゃんたちの日常生活を書いていこうと思います。先日もこんなことがありました。
 毎年、七月の初めには近くの保育園児達と七夕祭りを行います。このような交流を「世代間交流」と言います。「ささの葉さらさら」と七夕の歌を合唱し、大きなささに願い事を書いた短冊を飾りました。司会をしていた職員が「今日の事をお母さんやお父さんに教えてあげてね」と言いました。
 すると、「ここの年寄りにはもう、お父さんもお母さんもおらんよ」というお年寄りの声が、元気な園児の声に混じって聞こえてきました。「いてたら、お化けやがな」と別のお年寄りが言って大爆笑のうずでした。
 七夕祭りの最後に、「織姫様と、彦星様が出会う川はなんていうの?」と質問すると「三途の川」という自信たっぷりな答えが、あるおばあちゃんから返ってきました。けれど笑えない。笑ってはいけないでしょうと思いつつ、世代間交流の七夕祭りは終わったのでした。
 「あのね、答えは天の川。知ってる?」とさっきのおばあちゃんに聞いてみると「知ってるよ、三途の川。まだ見たこと無いけど」という返事がかえってきました。「もう!聞く耳持ってよ」と言いたくもなるけれど、こういうことが、この仕事の楽しさなのです。
 おばあちゃんをかわいいと思えるかどうかが、介護福祉士という仕事を楽しむかぎを握っているのではないでしょうか。